ワインと料理のマリアージュ
2018年4月7日
執筆者: 入交 功

みなさま、こんにちは!入交(いりまじり)です。
間が空いてしまい、誠に申し訳ございませんでした。書き溜めました原稿も、季節が少々変わりましたので
手を入れてご紹介させて頂きたく存じます。

前回までに、シャンパン・ワインの基礎的な知識について触れて参りましたが、今日はワインと料理の組み合わせを楽しむことを切り口に、お話しできればと思います。

ワインと料理のマリアージュ。『赤ワイン×肉』『白ワイン×カルパッチョ』など、誰もがぱっと頭に浮かぶ組み合わせだけではなく、ワインと料理の楽しい組み合わせは無限です。しかし、いざワインに合う料理を用意となると、洋風にアレンジしたり、仕上げにオリーブオイルを使ったり、ホワイトソースなどを組み合わせて、それっぽい雰囲気で終わらせてしまう方も少なくないと思います。
もちろん、美味しく、楽しければ良いのですから、そのアプローチは大切です!
でも「本当にこれでいいのか良くわからない…」と、毎回悩んでいる方は、「ワインの香り」を意識してみてはいかがでしょうか。実はワイン自身がとても良い先生で、合わせる料理や食材を教えてくれるのです。

さて、では「ワインの香り」ですが…その種類は数百種類にもおよびます。前にでてくる香りと、そうで無い香り。織り成すことで感じられる香りなど、さまざまです。
ところが、どんなに複雑な香りであったとしても、人が一度にかぎ分けることができるのは、せいぜい4~5種類程度と言われていますので、警察犬でもない限り、ワインのすべての香りをかぎ分けることは難しそうです。もちろん、ワンちゃんにお酒は絶対!タブーですが。。。
つまり、人が一度にかぎ分けられるこの4~5種類程度の香りを感じ、それを元に料理内容や食材を決めるという手法も、マリアージュに大切なこととして加えていただけたらと思います。

白・赤それぞれのワインに含まれる代表的な香りをご紹介しますと…

白ワインは、フルーティー、甘い花のような香りという印象があるかもしれません。ゲヴュルツトラミネールやリースニングなど、マスカット系のブドウ品種は、これらの香りを多く含みます。
バラの香りや青リンゴのような香りもよく表現されますね。
また、ソーヴィニヨン・ブランではグレープフルーツや柑橘系の香り、樽熟成を経たシャルドネは、酵母自身が消化したことで起こる独特の硫黄の香りや、樽由来のアーモンドやカシューナッツ、バニラ、バナナやキャラメルのような香りも感じていただけます。
また、赤ワインの香り成分の多くは、樽由来のものになります。もちろん、ぶどう品種特性の香りも相まっているので、香りはさらに複雑です。クローブ(丁字)、ココナッツ、バニラ、スミレの香りはよくテイスティングで用いられる表現です。
一般的には、チェリーやラズベリー、カシスなどの果実由来の香りはわかりやすいかと思います。
他には、シラー系でよく表現される黒胡椒の香り、さらに、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルローなどは、ピーマンのような香りや土や鉄などの感じることでしょう。
香りは、まずこのあたりを押さえて、意識を集中していただければと思います。

では、ここから料理との組み合わせについて一緒に考えていきましょう。
白ワインの場合、柑橘系やハーブの香りの特徴が顕著です。つまり、これと似た香りを持つ調味料などを食材に振りかけると、喧嘩せず、すんなりマリアージュすると考えられます。
例えば、白ワインは醸造工程による酵母の働きにより、洋梨やバナナなどの香りが発生しますが、チーズも同様に熟成を経ていくと、フルーツの様な香りを発する成分が出来ます。ここに果物の香りを持つ成分同士が良い相性となって繋がっていきます。「チーズとリンゴのカナッペ×白ワイン」など、皆さま一度は口にしたことがあるのではないでしょうか。ここに、はちみつ、砕いたナッツなどを添えることで、さらに香りと味の奥行きが出てくるかと思います。チキンは肉ですが、ローズマリーと共にグリルすると、白ワインとの相性はとても秀逸ですよね。
赤ワインの場合は、ジャム系の香りを感じさせるものが数多くあります。さらに、樽由来の香りの成分には肉にも含まれており、黒胡椒のスパイシーさも含まれるなど、やはりスパイスを振りかけた肉類にはもってこいです。和食は「白」というイメージがありますが、醤油や海苔が持つヨード香という成分は赤ワインに含まれています。ボルドーのポムロールやサンテミリオンの赤ワインには醤油と磯の香りがミックスしたワインが見受けられます。香ばしいうなぎの蒲焼やぶりの照り焼きなど、赤でも楽しめるお料理はたくさん。肉じゃがは、肉、玉ねぎ、にんじんなどスペインオムレツにも使う食材です。お醤油やみりんで煮詰めた味は、しっかりとした赤ワインに、サバの味噌煮なども同様に軽めの赤や辛口のロゼに合います。
わざわざ洋風に寄せなくとも、そのままでワインのご馳走になるというわけです。
少しだけ、ワインと共通する香りを持つ食材や調味料に視点を向けていただくと、マリアージュの世界が広がってくるのです。

一方で、どんなに香りの相性が良くとも、食材や調理工程で独特の香りがワインとの相性を邪魔する、ということもあります。代表的な例は、魚です。魚に含まれる鉄が過酸化された不飽和脂肪酸の仲間が混ざることで分解され、それがワインとぶつかると異様な生臭さを感じさせる、という結果です。お刺身を食べて、合わないワインとの組み合わせでがっかりした経験をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。
また生ガキの主成分は、グリコーゲンであることや乳酸が多く含まれているため、白ワインとは残念ですが合いません。しかし、これにオリーブオイルやレモンをかけることで、ワインの香りやワインに含まれる酸と繋がり、相性の悪さを軽減することがわかっています。また、熱を入れたものの場合、生臭さの成分が揮発することも関係して、生の時よりもぐっと相性が良くなり、そこにソースなどを加えることでマリアージュが生まれることもあります。
肉の臭みなどは、赤ワインのタンニンがマスキング(匂いを良い香りなどで包み隠すこと)することもわかっていますし、そこにカシス(ベリー系ジャム)風の香りを持つソースが肉にかかっていれば、自然と良いマリアージュとなり、味わいもさらに広がってゆきます。
今、ご家庭でおもてなしに出されているお料理も、香りを意識して、少しスパイスを加えたり、使っている塩やオリーブオイルを変えたりすることで、新しい顔が見つけ出せるかもしれません!

このように、香りマジックでワインと料理を楽しむのも、ワインとのつきあい方が広がります。
ワイン自身が偉大な「料理の師匠」でもあります。
色(見た目)にも香りにも身をゆだねて、ぜひ、トライしてみてくださいね!・・・今日も良い1日に乾杯!

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