認知症予防のために地元仲間とのつながりを
2017年4月1日
執筆者: 内門 大丈

認知症とは、「一度正常に発達した認知機能が後天的な脳の障害によって持続性に低下し、日常生活や社会生活に支障をきたすようになった状態を言い、それが意識障害のないときにみられる」と定義されます。

認知症は、歳をとることが最大のリスクと考えられていますが、歳をとっても認知症にならないようにできるだけ予防をしていくことが大切です。

認知症になりやすくする危険因子として、加齢以外にも、遺伝、動脈硬化、不摂生な生活習慣、頭部外傷の既往、喫煙、大量飲酒など様々なものが知られています。一方、健康的な食生活、適度な運動、知的活動や社会的なつながりなど多く持つことが認知症になりにくいと考えられています。今回は、社会的なつながりについて少し考えてみたいと思います。

認知症の中で、半数以上を占めるアルツハイマー病では、認知症症状が出る20年以上前からβアミロイドが蓄積していることが知られています。

2016年に、アメリカBrigham and Women’s HospitalのDonovan NJらは、孤独感(Loneliness)がアルツハイマー病発症前にみられる神経精神医学的な兆候の一つである可能性を、孤独感とβアミロイドの蓄積(PiB-PETを用いた脳アミロイドイメージング)の関連から示しました。さらには、孤独感を抱いているとβアミロイドの蓄積が進む可能性について言及しました。

孤独感を抱かないようにするには、仲間とのつながりを感じられ、幅広い交友関係を持つことが重要であると考えられます。例えば、社会の第一線で働いているサラリーマンは、会社内や取引先との付き合いがほとんどで、退職後に仲間を持とうと思っても、すでに形成されているコミュニティに参加することが難しいことが多いです。

現役時代のお付き合いの中での飲み会やゴルフコンペなどでは、そこそこつながりを感じられていましたが、退職後にはほとんど付き合いがなくなってしまうこともしばしばです。
今はこのような背景から、向こう三軒両隣りといった地域での人間関係が見直されてきています。

ボランティア活動や趣味の会など利害関係のない中での人間関係、同窓会などの交流再開など自分が所属している場所が様々あることは、孤独感を緩和させる可能性があります。
定年退職後に孤独を感じて、認知症が進行しないように、社会人のうちから様々な交流関係の種をまいておくのが良いかもしれません。また地域の中での人間関係は老若男女が集まり、様々な年代での交流が行われる場所でもあります。

執筆者プロフィール
内門 大丈(医師) Hirotake Uchikado
湘南いなほクリニック院長
横浜市立大学医学部臨床准教授

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