プロスポーツ選手が良い睡眠のためマットレスをホテルに持参してます、という記事をよく目にします。パフォーマンスを発揮するためには良質な睡眠が不可欠なのですね。
海外のお話ですが、一念発起して会社を立ち上げ、家族のため、社員のために睡眠時間を削りに削って働いた社長の記事をネットで拝見しました。おかげで会社は大いに発展しました。しかしご自身は認知症になってしまったというのです。
アルツハイマー病の脳内にたまるアミロイドβ蛋白は夜間睡眠中に脳内から排泄されることがわかってきました。この経路をグリンパティックシステムと呼びます。ぐっすりと眠っている間にアミロイドβ蛋白の排泄が効率よく行われるのです。夜遅くまで仕事をしていて、もう思考力の限界だ、と思っても一晩寝るとすっきりしてまた頑張れる、という経験を皆さんもお持ちではないでしょうか。2021年の科学雑誌に掲載された論文では、睡眠を7時間とる方は最も認知症のリスクが低かったようです。良質な睡眠は高額なアルツハイマー病治療薬に勝るとも劣らない効果が期待できるかもしれません。
かくいう私は、なぜか電気をつけたまま寝るという習慣がありました。しかしスマートホンを就寝前に見る習慣が良眠を妨げる、という記事を見て以来、真っ暗にして寝るようにしました。なんと噓のようにぐっすりと眠れて、体調もよくなり仕事の能率も上がりました。どうしてもっと早く実行してこなかったのだろう、と後悔するとともに、眠れないと訴える患者さんには、まず真っ暗にして就寝することから始めましょう、とお伝えしています。