プロサーファーというと、どうしても「体の強さ」に注目が集まりがちですが、実は「心」と「技」つまりメンタルの安定と集中力、そしてその土台となる日々のスキルの積み重ねこそが、僕のサーフィンにおいて最も大切な要素です。
波に乗るという行為は、想像以上にメンタルの影響を受けやすい。
自信が持てない日、何かに囚われている日、焦りが先立つ日には、どんなに完璧な波が来ても、思うように身体が動かないんです。逆に、心が落ち着いていて、“今、この瞬間”に集中できていると、不思議と身体も自然に反応して、最高のライディングができる。
僕は、こうした「心の状態」がそのまま「技」に直結するという感覚を、日々のサーフィンの中で繰り返し体感してきました。
そのために僕が意識しているのは、「感情を無理にコントロールしない」こと。
え?と思うかもしれませんが、僕は感情を抑え込むのではなく、「観察する」ことを大切にしています。
焦っている自分、緊張している自分、怖がっている自分を否定せず、そのまま受け入れてあげる。そして、その上で「今、自分にできること」に意識を向けるようにしています。
それが、自然の中でサーフィンをする上での“心との向き合い方”なんです。
呼吸もまた、僕にとって重要なスイッチの一つです。
波待ちの時間、試合前、あるいは大事なライディングの直前には、深く、ゆっくりと呼吸をすることで心を整えます。呼吸が整えば、心も整い、技も研ぎ澄まされていく。これは、海の中だけでなく、陸の上、日常生活でもまったく同じです。
人間関係、仕事、将来への不安……現代社会にはさまざまなストレスがあります。
だからこそ、「今この瞬間」を丁寧に感じること。それが、心の健康を保つ大きな助けになると僕は感じています。
実際に、コンテストの時もこの考え方はすごく活きています。
たとえば、ヒート中に点数で負けているとき。焦りそうになる気持ちをいったん手放して、「いい波が来ること」にだけ集中する。そして、息を整える。
この“切り替え”ができるかどうかで、その後の展開は大きく変わってきます。
もしここで気持ちが乱れ、焦りから無駄な動きが増えてしまえば、いざ良い波が来たときに、その波に“乗る準備”ができていない。緊張が先に立ってしまい、ライディングにも迷いが出てしまう。
そうなると、もう勝利の道は見えなくなってしまうんです。
僕にとって「心と技を整える」というのは、自分の内側と静かに対話しながら、“今”に集中すること。
波が来たら、あとは余計なものをすべて手放して、自然の流れに身を任せるだけ。
それが、サーフィンの魅力であり、そして僕が大切にしているライフスタイルの中心でもあります。