『食事を通して高齢者とコミュニティをつなぐ』
日本では、高齢化率の増加や一人暮らし高齢者の増加に伴い、高齢者の孤立・孤独が問題になることがあります。世界の他の国々でも、高齢化率の増加に伴って高齢者の孤立・孤独問題が指摘されることが多くなっているようです。
そのような現状の中、イギリスやオーストラリアでは、食事を通して孤立しがちな高齢者と地域の人々とをつなげるサービスが提供されています。2011年にイギリスで開始された「Casserole club(キャセロールクラブ)」と呼ばれるプログラムです。
「キャセロール」とは煮込み料理などに使用される鍋、またはその鍋で作られた料理のことで、欧米では昔から親しまれている家庭料理です。
サービスを受けたい高齢者とボランティアをしたい人がこのプログラムに登録し、ボランティアが近所に住む高齢者の自宅に手料理を持って行って一緒に食事を楽しみます。
高齢者が自分でウェブサイトから登録することも可能ですが、家族など身近な人が本人の許可を得て登録することも多いといいます。
頻度は利用者によって異なり、週1回でも、月1回でも、気が向いたときでもよいということです。
安全性を確保するために、ボランティアはプログラム登録時に安全な人物かどうか、食の安全性についての知識があるかどうか確認されます。また、利用した高齢者にはプログラムの運営側から、今後もサービスを継続したいかどうかなどの意見を聞くために電話連絡があります。
キャセロールクラブは2011年にイギリスで開始され、4年後にはイギリスとオーストラリアで7000人以上が登録しているといいます。
キャセロールクラブを利用することで、孤立しがちな高齢者が地域の人々とつながることができるだけでなく、健康的な食事を摂取することができたり、誰かと一緒に食事をすることで楽しい時間を共有することができるというメリットがあります。また、ボランティア側からも、自分たちのために食事を作る際に1人分多く作るだけなので、特別なスキルや長い拘束時間を要することなく誰かの役に立つことができるため参加しやすい、という意見が多く聞かれます。
高齢者が地域の公民館などに出向いて行って他の人々と食事、お茶、何かしらの活動を楽しむというサービスが提供されている地域は多く見かけられます。
これらのサービスももちろん、高齢者とコミュニティとをつなぐ手段ではありますが、高齢になると身体的な制限や交通手段の確保が困難といったさまざまな理由によって、外出することが難しくなるケースが多くなります。
そのような場合に、このキャセロールクラブのようなサービスは特に役立つでしょう。