海外の認知症施策紹介 Vol.7
2017年12月22日
執筆者: 太田 一実

動物との触れ合い The Connected Horse Project

動物との触れ合いは認知症の人や認知症予防のために、心理的・身体的にあらゆる効果をもたらすことはよく知られています。また、犬や猫などのペットを飼うことで、心臓発作や脳卒中のリスク低減、ストレスの減少、居場所や安心感の獲得といった効果も報告されています。このように、動物との交流を通して認知症の人の心理的あるいは身体的なケアを提供する活動はアニマルセラピーと呼ばれ、さまざまな場で実施されています。

そのようなアニマルセラピーのひとつとして、アメリカでは「The Connected Horse Project」と呼ばれる活動が行われています。これは、初期認知症の方々とその介護者を対象としており、馬との触れ合いを通してストレス軽減や生活の質の向上に向けたプログラムの開発とその効果を検証するためのプロジェクトです。

このプログラムの参加者は馬に乗るのではなく、馬を観察したり、毛並みを整えたり、馬とコミュニケーションをとる練習をしたりと、これまでに乗馬の経験がない人でも参加しやすいようにデザインされています。

このプログラムでは、馬との触れ合いを通してノンバーバル(非言語的)なコミュニケーションスキルを身に着けることを目的としています。

馬は人間の感情にとても敏感で、接している人間の感情をそのまま映し出すように行動するそうです。
参加者が無理やり馬を動かそうとしても、馬は思うように動いてはくれません。
参加者は、自分の働きかけに対して馬がどのような反応をするか、どのように行動するのかをよく観察しながら、自分の感情や馬への接し方をコントロールすることで馬との協力的な関係を作り上げることを学びます。
このような経験を通して参加者は、人間同士の関わり合いの中でも、相手を無理やり動かそうとするのではなく、相手と協力的な関係性を築くためにはどうすればよいのか、気づかされることが多いようです。

プログラムは3日間から7日間にわたります。参加した初期認知症の人たちとその介護者には、ストレスや介護負担感の軽減、問題行動の減少、睡眠の改善、コミュニケーションの向上といった効果が認められました。

馬との触れ合いを通して心身の健康の向上を目指したプログラムは、これまでに自閉症児や元兵士などを対象に行われ、その効果が認められています。

www.connectedhorse.com

執筆者プロフィール

執筆者一覧

  • 馬場康彦
  • 山内豊也
  • 鈴木善樹
  • 中村元昭
  • 千葉悠平
  • 大石佳能子
  • 西井正造
  • 比永 伸子
  • 松政太郎
  • 在津 紀元
  • 田中香枝
  • 牧島仁志
  • 牧島 直輝
  • 佐々木 博之
  • 落合 洋司
  • 日暮 雅一
  • 入交 功
  • 内門 大丈
  • 太田 一実
  • 加藤 博明
  • 川内 潤
  • 河上 緒
  • 川口千佳子
  • 砂 亮介
  • 竹中 一真
  • 辰巳 いちぞう
  • 都甲 崇
  • 保坂 幸徳
  • 横田 修