◆2040年には10人に1人が認知症に罹る!
厚生労働省「新オレンジプラン」によると、日本の総人口における認知症の人は2020年に631万人になると推計されていますが、2040年には953万人と大きく増える見通しです。端的に言うと、日本において2020年は約20人に1人が認知症に罹っている状況なのが、2040年には約10人に1人が認知症に罹る状況となり、認知症がものすごく身近なものとなるということです。
病院や介護施設の中だけでなく、街中で認知症の人が生活しているのが当り前の社会が到来するということです。
◆認知症の人にとって買い物は大変!
厚生労働省の調査によると80~84歳の人のうち24.4%の人が認知症に罹り、85歳以上の人のうち55.5%の人が罹ると言われています。また認知症以外にも、足腰が弱くなる、目が見えにくくなる、耳が聞こえにくくなるといった加齢現象も起こります。
このような加齢現象により、高齢者は近隣のショッピングセンターに行き、店内を物色し、商品の購買を決めることが簡単にはできなくなります。認知症の人の場合はさらに、歩いて数分のスーパーマーケットやコンビニエンスストアへ外出する場合でも、迷子になったり混乱したりすることで、買い物活動がとても困難になります。
このような買い物が困難な状況は、流通機能や交通の便が良い都市部であっても同じことであって、店舗への絶対的な距離ではなく、各人の加齢現象に応じた相対的な距離として捉える必要があるのです。
◆認知症の理解が当り前の社会にならないといけない!
大きな会社から街中の小さなお店まで、消費者トラブルになることを案じて認知症の人には積極的に物を売らない、売る場合でも家族や医療・介護関係者など周囲の人の意見を聞いて売るといったことが多いです。しかし、少子化が進むと家族や医療・介護関係者が少なくなり、認知症の人が増えればそれだけ認知症の人を見る人が減るということです。すると、認知症の人が必要な買い物ができなくなり、社会経済的に生活が著しく不安定になります。
したがって大きな会社から街中の小さなお店で働く人たちは、認知症の理解を深め、認知症の人を受け入れて積極的に買い物を支援していく必要があります。
◆認知症の人に支えてもらわなければならない!
2040年の日本の総人口に認知症の人が占める割合として1/10という数字は、消費市場としてはあまりに巨大です。また、2030年には認知症の人の金融資産が200兆円に達すると言われています。他方で少子化により、現役世代の市場は縮小します。つまり、現役世代にとっては認知症の人の消費市場は無視できない市場であり、認知症の人に買い物をしてもらわなければ稼ぐことができず、生活できなくなります。
したがって、現役世代の人はこれからの社会は認知症の人を支えるものと一方的に考えるのではなく、消費者として支えてもらわなければならないことを認識する必要があるのです。
◆認知症の人を支え、認知症の人に支えられる社会に!
ますます社会と疎遠になる認知症の人に、いかに必要なときに、必要な商品やサービスを届ける仕組みをつくるかが、これからの社会的な課題になります。そして、現役世代にとっては認知症の人の消費市場の活性化が期待されます。
このようにお互いが必要としているからこそ、社会として認知症の人を支え、認知症の人に支えられることが日本の社会経済の発展に欠かせないのです。