皆さん、こんにちは。今日は、パーキンソン病や認知症に関するお話を、できるだけわかりやすくお伝えしたいと思います。
福岡大学病院では、これらの病気に悩む方々を支えるため、私たちは専門の診療センターを設け、多職種のチームで包括的なケアを提供しています。認知症やパーキンソン病に対して、どう向き合い、どのような支援ができるのか、少しお話しさせてください。
認知症について
「もの忘れ」は誰にでもあることですが、認知症になると、その忘れっぽさが日常生活に大きく影響を及ぼします。例えば、道に迷う、日付や場所がわからなくなる、あるいは感情のコントロールが難しくなることもあります。福岡大学病院のもの忘れ外来専門センターでは、脳神経内科や精神科の専門医たちが協力し、早期診断や治療を行っています。また、認知症だけでなく、せん妄(急に混乱してしまう状態)や、周囲とのコミュニケーションが難しくなるBPSD(行動・心理症状)にも対応しています。
私たちは、認知症患者さんだけでなく、そのご家族の心のサポートもとても大切にしています。認知症看護認定看護師や臨床心理士、薬剤師、栄養士などの専門家が協力し、患者さんの日常生活が少しでも楽になるよう支援しています。また、もの忘れ相談窓口では、診療や介護に関するご相談にも応じています。
パーキンソン病について
一方、パーキンソン病は、体の動きがスムーズにできなくなる病気です。最初は手足の震えや、動作の鈍さが気になることから始まることが多いですが、進行すると歩行が難しくなったり、体のバランスが取りにくくなったりします。この病気は、脳の中でドーパミンという物質が減少することによって引き起こされます。
福岡大学病院のパーキンソン病診療センターでは、脳神経内科や脳神経外科の専門医をはじめ、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などが一緒にサポートしています。パーキンソン病では、薬物療法だけでなく、日常生活での動作を改善するためのリハビリテーションも非常に重要です。さらに、嚥下や発声の訓練、オンラインでの健康講座やパーキンソン病ダンスカフェなど、在宅での生活を少しでもサポートする取り組みも行っています。
地域医療との連携
私たちは、これからも地域の皆さんと共に、認知症やパーキンソン病と向き合っていきます。これらの病気を持つ方々が少しでも安心して生活できるよう、地域の医療機関や介護施設とも連携を強化し、地域全体で支える体制を整えていきたいと考えています。
今後も皆さまの声を大切にしながら、福岡大学病院の取り組みを発展させていきたいと思っています。どうぞお気軽に、私たちにご相談ください。皆さまの日々の健康を願いながら、これからも地域医療に貢献していきたいと思います。
N-Pネットワーク研究会の紹介
最後に、私が、内門大丈先生と一緒に共同代表を務めるN-Pネットワーク研究会の取り組みをご紹介させていただきます。2014年12月2日に第1回の研究会が横浜ベイシェラトンホテル&タワーズで開催されて以降、2024年9月13日に第40回の研究会が開催され、現在までの10年間の間に年4回の研究会を開催しています。
「N-Pネット」では、神経内科医(Neurologist)、脳神経外科医(Neurosurgeon)、リハビリテーション医(Neurorehabilitation doctor)、神経放射線科医(Neuroradiologist)、神経病理医(Neuropathologist)、そして精神科医(Psychiatrist)が緊密に連携し、神経変性疾患や精神障害に関する専門的な知見を共有することで、診断や治療技術を向上させることを目指しています。特に、高齢者に多い認知症やパーキンソン病などの病気に対して、各専門領域の知見を融合させ、包括的な治療を提供するためのネットワークを構築しています。
この連携は、単に神経領域(N)や精神領域(P)にとどまらず、感染症、代謝・栄養障害、内分泌疾患といった幅広い分野も積極的に取り扱います。特発性正常圧水頭症のように複数の診療科にまたがる疾患についても、各専門医が連携し、互いの知見を共有しながら、患者一人一人に対して最適な対応を模索し、学びを深めることに注力しています。
N-Pネットは、こうした専門医同士の知識の共有を通じて、地域の医療機関や介護施設との有機的な病診連携や診診連携を促進し、顔の見える連携を目指しています。また、このネットワークを活用して、医療技術の進歩だけでなく、高齢化社会に対応する医療・福祉産業の発展にも貢献していくことを目指しています。
さらに、各専門領域の知見を集積し、それをアウトリーチ活動として発信することで、地域や国内外の医療技術の向上に寄与し、医療を超えた広範な分野での協力関係を強化していくことを目指しています。