「過疎という病」
2017年6月2日
執筆者: 保坂 幸徳

こんにちは、山梨県丹波山村地域おこし協力隊の保坂と申します。
現在私は山梨県の丹波山村という人口600人弱の村で地域振興活動をしております。
まず初回は自己紹介を踏まえ、私が地域おこし協力隊になった経緯をお伝えいたします。

私は山梨県甲府市に生まれ、高校卒業までの間、山梨県内にて育ちました。
その後、山梨県を離れ、大学に進学し、その後15年間、東京の企業にてサラリーマンとして仕事をしてきました。

私が山梨県を離れている間、県内の環境は大きく変わりました。私が山梨に住んでいた当初は881,996人だった人口も、平成11年の893,190人をピークに減少の一途をたどり、現在では823,835人までに減ってしまいました。単純に計算すると年間約4,000人もの人口が減少していったことになります。
この人口減に高齢化も重なり、県内の街並みも大きく変わりました。昔は活気のあった商店街も、今ではシャッター街となり、多くの人で賑わったお祭りも、人手不足で開催が危ぶまれるような状況となりました。私が通った市内の小学校も少子化に伴い統廃合となっていました。
自分の親しみのある場所が年々衰退していく様は、病を患い衰えていく友人をみるようでした。病を治すためには治療が必要です。いくらお見舞に行っても、治療をしなければ病気はよくなりません。私は帰省をすることはあっても、地域のお手伝いをすることはありませんでした。「いつかは自分も治療に携わらないといけない
と思いながら、自分の時間を地域のために使うことはありませんでした。

そんなある日、全国的に鹿や猪(平成29年現在 有害指定獣)が増え、農林業に大きな損害を与えていることを知りました。山梨県も例外に漏れず、年間約2億円という多大な被害を受けており、有害獣の駆除を、里山に住む猟師が進めているとのことでした。
私は直接里山の猟師さんと話をしたいと思い、山梨県の里山を訪問しました。
とても恥ずかしい話ですが、私は長年自然が豊かな山梨県に住んでいながら、里山にはほとんど足を踏み入れたことがなく、里山の状況を知ることはありませんでした。
狩猟が盛んなエリアはどこも人里離れた山奥で、人の数より動物の数のほうが多いような場所ばかりでした。
そんな山奥で深刻な問題になっているのは、やはり過疎問題でした。
「やりたいことはたくさんある。でも、それを実行するための人手も金も足りない。このままいくとこの村は30年後に消滅するらしい。こんな山奥の小さな村に興味を持って足を運んでくれただけでうれしいよ。ありがとう。」そう笑いながら私に話をしてくれたのが、丹波山村の方でした。
ここもすでに過疎という病に犯されている。そしてこのまま放置すると病は進行し、30年後には死に至るというのです。余命宣告されている村。
私が生まれ育った町は、まだ猶予があります。しかしこの村にはその猶予がありません。そして、山梨県内には同じような状況の里山がいくつもあるのです。
これまで感じていた故郷への後ろめたい思いが私の中にこみ上げてきました。

村を訪れて約3か月後、私はここ丹波山村に移住を決め、新たな生活を始めました。

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