④Royal Trinity Hospice:終末期支援
湖水地帯の後は車でマンチェスターまで行き、鉄道でロンドンに、、、と思っていたら、ストでした。えー、マジかよ。でも、どうもストは完全に止まる訳ではなく、間引くよう。ストをやっていると聞いて、乗客も回避するので結果的に難なく電車に乗れました。ちなみに同時期に、待遇改善を求めて医師はじめ医療者のストもやっていました。こちらは時期を回避し、病気にならないという訳にはいかないでしょうから、どうするんでしょうね?イギリス人たちは「終わってるわー」と嘆いていました。
ロンドンの街を歩いていたら、可愛いショップが。Royal Trinity Hospiceという終末期ケアを支援するチャリティ団体がやっている古着ショップです。
同団体は、自宅や院内で認知症を含めた人生の終末期にある人を支援しています。昨年は£1000万(約20億円)を集め、2600人を支援し、そのうち2000人は自宅にいた人とのこと。寄付集めの方法は色々あり、個人でできるイベントも開催しています。例えば、走る、歩く等の大会に参加し、参加費が寄付になるだけでなく「£250(約5万円)集める!」と宣言し、集まった金額を寄付するなど。この方法は一般的らしく、がん患者を支援しているMaggie’sを訪問した時も同様の説明を聞きました。(Maggie’sの方は数百万円集める強者も、、、。)
さて、ショップの方は、古着(洋服、バッグ、靴、アクセサリー等)がセンス良く並べられていました。商品は業者からの仕入れは不可で、全部寄付されたものです。売上は活動費に充てられます。服も小物もウインドウに飾られて、目を引きます。日本の古着ショップは、探すのが楽しいというコンセプトなので、キレイなものも汚いものも、良いものも、ガラクタもごちゃっと詰め込んでいることが多いですが、こちらは厳選された良いものが置いてあります。「Preloved, not unloved」(要らないからではなく、愛着があるから寄付した)との標語も素敵でした。
ここで、緑に金の縁取りと刺繍のある上着を買ったのですが、一枚布を縫い合わせていて、聞けばペルシャ(イラン)のものとのこと。£10(約2000円)で、早速その日のアフターヌーンティーに活用させて頂きました。
最後に
今回の視察では、複数の施設を回り、学ぶところは非常に多かったです。現地に住んでいる友人知人からNHS(イギリスの皆保険制度)の非効率や治療の不出来事例も聞いたので、十把一絡げに「イギリスは優れている」と言うつもりはありません。しかし、少なくともベストプラクティス施設では、素敵でした。
1)徹底した患者中心主義、、、理念だけでなく、プロセス、仕組みに落とし込まれていて、実践が確保されていること
2)新たな手法のトライアル、、、遊びや仕事、ITや自然の活用等、治すための新しい考え方が実地で取り組まれていること
3)アウトカムの重視、、、アウトカムを徹底的に評価し、結果の開示していること
はすごいな、と感じました。
これらの背景に、チャリティ文化があるのでは、と思っています。
イギリスはチャリティ文化が発達していることは有名ですが、小学校の頃から「寄付教育」があるそうです。お年玉(クリスマスプレゼント?)を寄付するというだけではなく、自分でお金を得て寄付します。また、どこに寄付するか、何故そこかを考えさせるそうです。
国も応援していて、寄付には税額控除があるのと、寄付した金額に応じて国が追加で拠出すする(£100に対し£25)仕組みがあります。
寄付をしてもらうには、それに耐えられる施設やサービスにならないといけなく、患者中心で運営していること、新しいことをトライアルしていること、その結果はどうだったか等を理念、戦略、経営数字ととにも積極的に発信していく必要があります。
今回、どの施設もすんなりと予約が取れ、行けば紅茶やクッキーでもてなされ、ファンドレイジングの担当マネージャーを中心に長時間に亘って説明をしてくれて歓待されました。これも自分たちの発信が極東の国まで届いたことへの喜びと、私たちの訪問が次の発信に繋がるからではないでしょうか。
国が保険制度で決めている金額だけでなく、社会に積極的に発信して、真価を問う仕組みはとても良いです。日本にはチャリティ文化はありません。寄付を促進するために、税制を変えないといけない、という議論がありますが、変えなくてはいけないのは税制だけでなく、施設側の運営プロセスやガバナンス体制も改革が必要だと感じました。
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ご連絡の際には、「イギリス視察報告」をご覧になった、とお書きください。
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尚、写真の一部は訪問先のHPを転載しています。