コンサルティング事業を営む弊社は日頃、医療・介護の現場に出入りしていて、“離職”は避けて通れない喫緊の課題であろう。
“離職”は単純に人手不足を引き起こすだけではない。この事象への認識を誤ると離職は連鎖し、実務現場を逼迫させ、全体の生産性を落とす。
それだけではない。離職の本質理由によっては地域の信頼を失い、求職者すら遠ざける。
インターネットの時代、ネガティブな評価はあっという間に広がり“ブラック企業”などという烙印を押されてしまう例も少なくない。
弊社は長年、超高齢社会の到来に当たり、産業構造の変化や働き方・働かせ方の変遷を研究している。
今回は離職を引き起こすメカニズムについて解説をしたい。
離職の本質的理由は以下の3要素で構成されている。
1. やりがい
文字通り仕事のやりがいを指す。外部評価や他社評価。仕事の過程に存在する。
2. 待遇
職位や賃金など。仕事の結果に存在する。やりがいと混同されがちだが別物。
3. 人間関係
職場内の人間関係。
やりがいを失って辞める人がいる。待遇が伴わず辞める人がいる。人間関係に行き詰まって辞める人がいる。いろんなことを口では言うがだいたいはこの3つから構成されていると言っていい。
仮に、「親の介護で」とか「病気の静養」などと理由があったとしても、それは理由ではなく、辞めるという選択をする“きっかけ”でしかない。
やりがいにあふれ、辞めたくなければ相応の相談過程を踏むからだ。
こんな例が後を絶たない。
やりがいを失い、待遇で折り合いをつけようとして、それでも収まらず人間関係にすがる。
こうなってしまうと大変やっかいだ。
ネガティブ人材で徒党を組んで管理者を困らせる構図をよく目耳にする。
行くところがなく、仕方なくいるので役に立たないこともあろう。
年収4,000万円の金融マンでも辞めるときは辞めるし、400万の工場作業員でも辞めない人は辞めない。その裏にあるのは“やりがい”だ。
重複するが、“やりがい”とは仕事の過程に存在し、外部評価で表される。その外部評価に喜びを感じてやりがいを生み出す。
果たして、みなさんの職場のマネジメントは“やりがい”創出ができているだろうか?
または働く個人がやりがいを見いだそうと努力しているだろうか。
その根底にあるのは“要求”である。要求とは仕事の質を指し、「仕事をしろ」ではなく「○○な仕事をしろ」ということである。
この“やりがい”欠乏が慢性化すると外部評価を欲する欲求の高い優秀な人材はやめてしまう。それでも残る人材は待遇に折り合いをつけようとしがみつく生存欲求にすがる“生活労働者”だ。生活のためだけに仕事をする欲求・質ともに低い人材である。
この層が増えると大変やっかいである。極力少ない仕事でお金をもらおうとするので仕事の質が上がらない。“顧客目線”はどこへやら、多くが自分都合での職場が形成されてしまう。
クレームはすべてがリスク。当然仕事が増えるので隠そうとする。事業の収益は下がっていくのが容易に想像できよう。
収益が下がると待遇に影響する。それで辞めてくれればいいのだがそれでも辞めない。仕事が楽だからだ。そうなると今度は人間関係にすがり始める。優秀な人材は職場いじめで淘汰され、せっかく入っても夢を失いそのまま去って行く。「ここはダメだ」と。
これが優秀な人材が流出していくメカニズムである。
一度職場のやりがいについて内部で意見交換をしてみてはいかがだろうか。自社の現在地が透けて見えてくることと思う。
このような事象を改善していくコンサルティングや戦略設計、研修やセミナー、内部分析を承っているので思い当たるところあればご相談いただきたい。