認知症高齢者数は、2025年には700万人に達すると推測されている。
このような状況の中で、2015年1月に、認知症施策総合戦略(新オレンジプラン)が策定され、早期診断・早期対応に向けた支援体制の一つとして、「認知症初期集中支援チーム」の設置が全国ですすめられている。2013年全国14拠点でモデル事業が始まったが、2018年にはすべての市町村に設置されることとされている。
「認知症初期集中支援チーム」とは、看護師、保健師、作業療法士、介護福祉士など複数の専門職が家族や地域住民等の訴えにより、認知症が疑われる人や認知症の人及びその家族を訪問し、アセスメント・家族支援などを包括的、集中的に行ない、自立生活のサポートを行うチームを言う。
本事業の対象者は、40歳以上の方で、
①医療サービス、介護サービスを受けていない者または中断している者、
②医療サービス、介護サービスを受けているが認知症の行動・心理症状(BPSD)が顕著なため、対応に苦慮している者である。
一方、在宅医療の必要性に関しては論を俟たず、年々在宅療養支援診療所数は増加してきている。
しかし、上述したように、BPSDのため医療機関を受診したがらない認知症の人は数多くいて、通常の在宅療養支援診療所では、これらの人に対しての初期介入を十分に果たせる医療機関は少ない。
この理由として、大きく3つのことが考えられる。
① 認知症専門医はたいていの場合、大学病院もしくは総合病院に勤務して在宅療養支援診療所に勤務しているものは少ない。
② 認知症のBPSDに対しての対応が得意とされる精神科医も在宅医療をしているものは少ない。
③ 在宅医療の中心的な担い手であるかかりつけ医の認知症への対応力は十分ではない。
(現在、認知症サポート医養成やかかりつけ医のための認知症対応力向上セミナーなどに力をいれてきてはいるものの)
「認知症初期集中支援チーム」はまだはじまったばかりであるが、将来的な地域医療のあり方としては、特に支援チームの名を語るまでもなく、自然に多職種協働連携の中で、認知症への早期介入ができるようになっていくことが理想である。
特に医師の役割に注目すれば、認知症を専門としている医師は地域医療へ、かかりつけ医はより認知症への知識を深め対応できるようになっていくという双方向の流れを加速させる必要がある。
全国で開始される「認知症初期集中支援チーム」の成果はいずれ公表されることになるが、これをもとに、認知症の容態に応じた適時・適切な医療・介護等の提供が十分になされていくことを期待したい。