「行為能力(2)」
2017年5月2日
執筆者: 竹中 一真

民法が定めるところによる「行為能力」制度には,成年後見類型,保佐類型,補助類型と判断能力の程度に応じて3つの類型があることをご紹介しました。ちょっとおさらいをしておきますと,成年後見類型は,「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」,保佐類型は,「精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者」,補助類型は,「精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者」がそれぞれ対象となります。
そして,判断能力が失われるにつれて,保護の度合いが強くなり,その一方で権利を制限されるという関係にあります。それでは具体的にどのような保護が与えられているのか見ていきましょう。
 成年後見類型においては,日用品の購入その他の日常生活に関する行為を除いて,本人が行った法律行為は取り消すことができます。また,成年後見人には同意権がありません。これは,本人は判断能力を欠くため,成年後見人が同意をしたとしても,そもそも有効な法律行為をすることはできないからです。そのため,成年後見人は,本人の財産をすべて管理し,その財産に関して包括的な代理権を有することになります。
 保佐類型においては,民法に定められる重要な行為について保佐人の同意が必要であり,同意のない本人の行為は取り消すことができます。具体的には①元本を領収し,又は利用すること,② 借財又は保証をすること,③不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること,④訴訟行為をすること,⑤贈与,和解又は仲裁合意(仲裁法参照)をすること,⑥相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること,⑦贈与の申込みを拒絶し,遺贈を放棄し,負担付贈与の申込みを承諾し,又は負担付遺贈を承認すること, ⑧新築,改築,増築又は大修繕をすること,⑨民法第602条に定める期間(土地については5年,建物については3年など)を超える賃貸借をすること,と定められています。
 補助類型については,通常の行為に関しては一応の判断能力があるけれども,高度な判断を要する取引行為などに関してはその能力が不十分という程度を想定していますから,いかなる法律行為に補助人の同意が必要で,またいかなる法律行為を取り消すことができるのかは,裁判所が個別具体的に定めます。
 意思能力に問題がある者のために定められた「行為能力」の制度ですが,では一体どの程度認知症が進行したら,成年後見相当なのか,保佐相当なのか,補助相当なのかについては,素人では判断が難しいものです。判断能力があるにもかかわらず,自由に契約をできる権利を制限されてはたまったものではありません。そこで,裁判所では,専門家である精神科医の診断書をもとに慎重に判断をしています。ここは医学と法律が交差する場面と言えるでしょう。

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