特定贈与信託
2017年9月17日
執筆者: 加藤 博明

前回まで相続税、所得税における障害者の控除について説明させていただきましたが今回は特定障害者に対する贈与税の特例にあたる制度、特定贈与信託について説明させていただきます。

この制度は、特定障害者の親族が、特定障害者(特別障害者及び障害者等級2,3級の障害者等)の方の生活の安定を図ることを目的として、金銭等の財産を信託銀行等に信託する場合に、特別障害者の方に対しては6,000万円、特別障害者以外の特定障害者の方については3,000万円を限度に贈与税を非課税とする制度です。

一般的な贈与税については、年間110万円を超えると贈与税が課税されることとなります。仮に6,000万円を1年で贈与した場合の贈与税は2,599万円程度かかってしまいます。
この制度を利用することで、税制面での優遇のメリットだけでなく、財産は信託銀行等が管理しますので、特定障害者の生活または医療費の需要に応じて、定期的に実際に必要な金額が支払われるので、勝手に浪費したり、詐欺や盗難のリスクを避けることができます。また、親族が亡くなった場合でも引き続き特定障害者の方に生活費や医療費等の支払は信託銀行経由で行われますので、将来の心配にも備えることができるといえます。

一方で、個々の信託契約によって定められた信託報酬や租税公課、振込手数料その他の事務処理手数料が発生します。
一度締結された信託契約の取消しや解除はできず、信託期間や受益者(この場合は財産をうけとる特定障害者)を変更することもできません。したがって、メリットとデメリットを十分理解したうえで、この制度を適用するか否かを判断する必要があるといえます。
特定障害者の方を将来にわたって面倒をみてもらえる信頼できる親族等がいるかいないかが1つの判断基準になってくると思います。

(参考)
特別障害者以外の特定障害者とは
①児童相談所、知的障害者更生相談所、精神保険福祉センターまたは精神保健指定医に判定により中軽度の知的障害者とされた者
②精神障害者保険福祉手帳に障害等級が2級または3級であるとして記載された精神障害者
③精神または身体に障害のある年齢65歳以上の者で、その障害の程度が上記①に準ずる者として市町村長等に認定を受けている者

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